Student’s Column「私にできること」

福島で野生動物の調査がしてみたい。そう思ったのは大学3年で先輩の調査に同行したときだった。
2011年3月11日に発生した東日本大震災で私は地元の宮城県大崎市で被災した。被災した地域になにか力になることはできないだろうかと思い、高校で東京農業大学が復興のために様々な取り組みを行っていることを先生から教えてもらった。さらに、農大の先輩方の調査に同行したときやサマースクールに参加した際に、浜通り地域のイノシシが豚熱の発生により個体数を減らしているという話を耳にした。そこで、以前から興味があった野生動物で、同じ東北人として何か役立てることはないかと思ったことが、福島県で卒論調査を行うきっかけの一つである。
私の卒業論文は、福島県浜通り地区において豚熱がイノシシの生息状況に与えた影響の調査である。2018年から発生が確認され、各県に広がっている豚熱が発生後、どのように回復しているかを検討することが今後のイノシシの管理対策に重要だと考えた。浜通りにも豚熱が発生していることから、先輩方が丘陵帯に設置したセンサーカメラを利用し調査を行った。以前に何度か調査に同行したが、まだ行ったことのない場所が多く、地図上で分かっていても実際に探すと思っていた場所と違うことが多々あり、「本当にここにあるのだろうか…?」と思いながら藪の中や沢を歩いた。現地へ足を運び、自分の目で見ないと分からないことが沢山あるのだと実感した。

センサーカメラには様々な動物が映った。獣道を走り抜けるイノシシの親子の他に、カメラの前を堂々と歩くカモシカやヤマドリ、カメラで遊ぶサル…。現地での調査は暑さや寒さ、苦手な虫など大変なことが多いが、このように面白い動画や野生動物の生活の一部が撮影されており、そのかわいらしい行動に時間を忘れて見てしまう。
また、一年間にわたって調査を行うので春の桜や秋の紅葉、雪が降ったら雪景色が見ることができ、四季の良さを森林の中で感じることができる。海が近いことから海産物が美味しく、「なみえ焼そば」などの地元の有名な食べ物も多くある。どれも美味しく、ひそかに調査での楽しみになっていた。
調査でイノシシが映ると結果に少しでも近づいているのかなと嬉しさを感じる。現在は開発が進んで林地が切り開かれ、ソーラーパネルが次々と設置されており、このような光景を見ると、野生動物の住処が無くなってしまうのではないかと不安になる。この調査の結果が今後の浜通り地区でのイノシシの管理対策に少しでも役立つことを祈っている。
(森林総合科学科 森林生態学研究室 4年)